1984 年 27 巻 6 号 p. 653-661
血中インスリン, ブドウ糖を2変数とする定係数微分方程式モデル, いわゆるAckermanモデルの一部に修正を加え, インスリンのコンパートメントを2つに分割したモデル (3次系モデル) に基づいて, 糖尿病患者を含む134例の経静脈ブドウ糖負荷試験時の血中ブドウ糖, 血中インスリンの経時データの動態解析を行った. 細胞外腔とは別のコンパートメントに移行したのちそこではじめてインスリンがブドウ糖の組織摂取に影響を与えると仮定することによって, Ackermanモデルによる解析の際にみられたパラメータ値の生理学的矛盾, 符号の正負逆転が解消し, 数値の極端なバラツキもなくなるとともに, モデルに対する適合率も上昇した (94%). 3次系モデルと, Ackermanモデルの両モデルに共通して適合した108例について, 推定されたパラメータ値を比較した. また, ブドウ糖とインスリンの平衡状態値と目される空腹時と糖負荷後120分時の測定値とパラメータとの関係を検討した. その結果, 3次系モデルはAckermanモデルに比べると生理学的により妥当性の高い形でパラメータ同定がなされており, 糖尿病の病態や耐糖能異常の指標として有用性が高いと考えられた.