糖尿病
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亜鉛によるインスリンアレルギーの1例
ヒトインスリンの使用経験
赤間 高雄川井 紘一板倉 光夫藤田 敏郎小出 義信久貝 信夫山下 亀次郎
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1984 年 27 巻 sppl1 号 p. 93-98

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抄録

最近われわれは, 43歳女性のインスリン非依存性糖尿病患者で皮膚のインスリンアレルギー症状を呈し, かつ血糖のコントロールが困難であった症例を経験したので報告する. 患者は罹病期間10年で最近2年間インスリンを使用していたが, インスリン療法開始18日後より注射部位の廣痒感・発赤・硬結が出現し, 高度精製のウシおよびブタインスリンにても同様の症状がみられていた. 入院後の皮内テストにより半合成ヒトインスリンにてもアレルギー症状を呈し, インスリン製剤中に含まれる亜鉛によるアレルギーが最も考えられた. また, 症状の1つである廣痒感はインスリン製剤中に含まれるフェノールおよびグリセロールにより生じることがわかった. 治療として中間型インスリン製剤の中で最も亜鉛含量の少ないNPHインスリンを使用し抗ヒスタミン剤と副腎皮質ステロイド剤の外用を併用することによってアレルギー症状を著明に軽減することが出来た.
一方, 本症例ではインスリン非依存性糖尿病としては通常よりインスリン必要量が多く, 皮膚アレルギー症状との関連から, 注射部位でのインスリンの吸収不全あるいはインスリンの分解が起こっている可能性が考えられた. しかし皮下注法, 筋注法, アブロチニン添加皮下注法での血糖およびIRI値の比較からは本症例でインスリン必要量が多くなった理由を明らかにすることは出来なかった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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