糖尿病
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正常, 肥満, 糖尿病および肝硬変症におけるEntero-Insular Axisの検討
血中IRIと血中および尿中CPR動態を指標として
楢崎 健次郎稙田 太郎小野 弘井口 登与志渡辺 淳迫 康博梅田 文夫井林 博
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1985 年 28 巻 10 号 p. 1105-1112

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抄録

Entero-Insular axis (EIA) は, 従来経口糖負荷時に見られるインスリン分泌の増幅効果をとらえた概念である.最近, C-ペプチド (CPR) の同時測定により, 経口 (OGTT) と経静脈ブドウ糖負荷 (IVGTT) ではインスリンの代謝クリアランスが相異し, OGTTに見られる末梢血高インスリン血症の一因として関与するという新しい見解が提起されている.われわれは正常 (N) 5名, 肥満 (O) 11名, II型糖尿病 (D) 9名および肝硬変症 (L) 6名について, 同一対象にそれぞれ75gOGTTと30gIVGTTを施行し, 血中および尿中CPRを指標にこの点の再検討を行った.
インスリンの分泌増加量、ΣΔIRIおよびΣΔCPRはいずれの群においてもOGTTで有意に高値を示したが, 刺激量ΣΔBSも有意高値 (あるいは高値傾向) であり, したがってOGTTにおける内因性インスリン分泌の増幅による結果とは断定できなかった.一方, 肝における代謝をほとんど無視できるCPRを基準とした諸指標のうち, N群ではΣΔIRI/Σ ΔCPR・IRI/CPR・ΣΔIRI/U-CPR, 0群ではIRI/CPR・ΣΔIRI/U-CPR, D群ではΣΔIRI/U-CPRはいずれもOGTTで有意の高値を示した.他方, L群ではこれらの諸指標はいずれも両負荷試験の間で有意差を認め得なかった.以上の成績はOGTTに見られる高インスリン血症では, 少なくとも一部インスリン分泌後の代謝クリアランスの低下が関与し, この機構に肝の役割が大きいことを示唆している.
結論: 内因性インスリン分泌の定量的指標として血中CPRおよび尿中CPR排泄量を基準に検討すると, EIAに見られる高インスリン血症には肝におけるインスリン代謝クリアランスの低下が一部関与しているものと考える.

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