糖尿病
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インスリン治療により著明な高プロインスリン血症を呈した1症例
播 穣治今村 諒道八十 新治志伊 光瑞横野 浩一丹家 元陽福田 昌弘馬場 茂明
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1985 年 28 巻 4 号 p. 595-601

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抄録

インスリン治療中の66歳の女性糖尿病患者で, インスリン使用後, 1,008ng/mlのインスリン抗体の出現とともに, 空腹時血中プロィンスリン (immunoreactive proinsulin, IRP), IRI, CPRの濃度は, 酸一エタノール抽出による収率を補正して, それぞれ49.3ng/ml, 428μU/ml, 128ng/mlと異常高値を示した.Bi0-GelP30ヵラムを用いた検討により, IRI, CPRの活性の大部分がプロィンスリン分画に存在することが明らかになった.本症例では二度にわたる短期間のウシーブタ混合インスリソ治療後, 糖尿病状態の改善とともにインスリン治療は不要となり, 糖負荷試験でもIRI, 反応の回復を認め, 空腹時, IRP, IRI, CPRはそれぞれ0.7ng/ml, 20μU/ml, 1.8ng/mlと正常化レ, インスリン抗体も1.5ng/mlに減少した.その後, 再び血糖値の上昇を認めたため生物学的合成ヒトインスリンを使用し, インスリン抗体は40ng/mlと軽度増加したが, IRP, IRI, CPR値に著変なく, 前回と同様短期間でインスリン中止が可能となった.全経過を通じてブタプロインスリン特異抗体0~1.2ng/mlと低値であった.IRPが高値を呈した時の血清では125I-ブタインスリンとの抗体の結合は, 他の対照とした7例のインスリン抗体陽性患者血清に比較して, 非標識ブタプロインスリン添加により容易に解離され, このことより本症例はプロインスリンにきわめて親和性の高いインスリン抗体による高プロィンスリン血症と考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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