糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
微小針型ブドウ糖センサを組み込んだ携帯型人工膵島による糖尿病患者の血糖制御
伯井 信美
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 28 巻 5 号 p. 613-621

詳細
抄録

糖尿病患者の血糖制御を長期にわたり遂行し, その結果として細小血管合併症発症進展を阻止せんとする人工膵島開発の所期の目標を達成すべく, すでに微小針型ブドウ糖センサを組み込んだ携帯型人工膵島を開発した.
今回, 微小針型ブドウ糖センサによる健常人および糖尿病患者皮下組織ブドウ糖濃度連続計測を行い, ブドウ糖センサの妥当性, 有用性を検索すると共に, 携帯型人工膵島による糖尿病患者の血糖制御を試み, 他のインスリン療法に対する卓越性の比較検討を行った.
1) 前腕部皮下組織内に留置した微小針型ブドウ糖センサ出力値は, 同時に計測した静脈血糖値と, すぐれた相関を示し, その際の時間遅れは4.9分にすぎなかった.
2) 携帯型人工膵島による糖尿病患者の血糖日内変動の制御は, 中間性インスリン1日1回皮下注射療法, インスリン頻回注射療法, インスリン皮下持続注入療法時に比し, 有意にすぐれたものであった.また, 携帯型人工膵島による3~6日間の生理的な血糖制御において, インスリン需要量は1日最大12U, 毎食事追加量は3~10Uの変動を認めた.
3) In vivo “みかけ上のセンサ特性” は皮下組織内留置時, 時間経過と共に劣化を認めた.
以上, 微小針型ブドウ糖センサ, ならびに本センサを備えた携帯型人工膵島は, 現時点では3日ごとのセンサ交換を行うことにより, 糖尿病患者の長期血糖制御に有用であることを認め, 同時に, 糖尿病患者の厳格な血糖管理におけるclosed-loop制御の必要性を示唆しえた.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top