糖尿病
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糖尿病性神経障害の発生機序に関する研究
Aldose Reductase阻害剤 (ONO-2235) を用いたSorbitol代謝異常の検討
畑中 行雄
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1985 年 28 巻 8 号 p. 901-908

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抄録

糖尿病性神経障害の発生には高血糖に基づく種々の代謝異常が関与していると考えられるが未だ一定の見解がない, 近年Polyol pathwayの異常が注目され, 神経組織におけるpolyolsの蓄積と神経機能異常との関係について検討されつつある.
著者はこの経路の律速酵素であるaldose reductaseの阻害剤 (ARI) を用いた末梢神経機能障害の発現にsorbitol代謝がいかに関与しているかを検討した. streptozotocin (STZ) 糖尿病ラットでは, STZ (60mg/kg, IV) 投与後まず血糖の上昇が見られ, やや遅れて神経組織内sorbitol含量 (NSC) の増加が認められた. しかし神経伝導速度 (MNCV) の低下は更に遅れて発現しており, NSCが一定の閾値以上に蓄積して始めてMNCVが低下するものと思われた. STZ糖尿病ラットにARIを予防的に経口投与するとMNCVは正常対照群と有意差なくほぼ正常に保たれたが, 神経組織内sorbitol蓄積はARI非投与糖尿病群の54%に抑制されたのみであった. すなわちsorbitol蓄積が一定の閾値以下に留れば神経機能が正常に保持され得る可能性が考えられた. また2週間の糖尿病状態を経たSTZ糖尿病ラットにARIを投与したところ, NSCが有意に減少すると共に低下していたMNCVが有意に改善し, ARIの治療的効果が確認された. これらの結果から少なくとも急性期糖尿病状態ではNSCと神経機能とは極めて密接な関係があると考えられ, またARIが治療薬としても有効な手段となり得る可能性が考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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