糖尿病
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Epstein-Barrウイルス感染が発症に関与したと考えられ, 各種自己抗体の認められた小児I型糖尿病の1例
田中 雄二岡 暢之野津 和巳野手 信哉
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1986 年 29 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

Epstein-Barrウイルス (EBV) の感染が発症に関与したと考えられ, 抗甲状腺抗体 (ATA), 膵島細胞抗体 (ICA) および補体結合性膵島細胞抗体 (CF-ICA) だけでなく, インスリン使用前に抗インスリン抗体をも認めた小児I型糖尿病の1例を経験したので報告する. 症例は9歳の男児で, 昭和57年11月頃より多飲, 多尿が出現, 夜尿および体重減少を認め, 12月7日, 当科入院した. 過去1年間, 発熱などなく元気であり, 入院時に肝脾腫, リンパ節腫脹などは認めなかったが, EB-viral capsid antigenに対するIgG抗体は2,560倍と強陽性であった. 他のウィルス抗体価には変動を認めず, ATA, ICAおよびCF-ICAは陽性で, さらにインスリン使用前の抗インスリソ抗体もnon specic binding 49.0%と陽性であった. 早朝空腹時で血糖230mg/dl, 尿糖およびケトン体は (2+) のためインスリン療法を開始し, 発症後約2年経過した現在もこれに依存している. またATA, ICAおよびCF-ICAは陽性が持続しているが, EBV抗体1面は漸減しており, その経時的な消長から糖尿病発症前にEBV感染があったと考えられ, これらの自己抗体産生さらには糖尿病発症に何らかの形で関与した可能性が考えられる. またHLAの検索では, BW54, DR4など市本人I型糖尿病に比較的特異とされるものが認められた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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