糖尿病
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摘出灌流ラット腎における糖新生飢餓および部分的肝切除の影響
佐野 隆久河村 孝彦後藤 円治郎鬼頭 柳三中村 二郎榊原 文彦西田 友厚土田 勇奥山 牧夫坂本 信夫
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1986 年 29 巻 10 号 p. 881-887

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抄録

腎皮質は肝とともに血糖維持に極めて重要な役割を果たしており, 特に絶食時およびケトアシドーシス時の糖新生がよく知られている. われわれは各種条件下での腎皮質における糖新生を検討してきたが, 今回は絶食および肝部分切除時のラット腎皮質の糖新生および各種counter regulatory hormone動態について検討した.
oxaloacetate, 2-oxoglutarate, glutamate, glutamineからの糖新生は24時間絶食により有意に増加し, pyruvate, lactateよりの糖新生は, 絶食に肝部分切除を加えることにより初めて増加傾向を認めた. fructoseよりの糖新生は24時間絶食および肝部分切除によってともに有意の増加を認めたが, 両者の併用ではその効果は相加的ではなかった.
以上の成績はphosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK) が24時間絶食によっても, また肝部分切除によっても誘導され, 一方pyruvate carboxylaseは両者の併用によって初めて誘導されることを示唆している. 事実, 腎組織中PEPCK活性の直接測定により, 同酵素活性が24時間絶食により上昇し) 肝部分切除の併用によりさらに上昇するという結果を得た.
糖新生のkey enzymeであるPEPCKの増減に影響を及ぼすと予測される各因子の検討では,コルチコステロン,グルカゴンはPEPCKの推移とは必ずしも一致せず, PEPCK誘導のtriggerとなっている可能性は否定的であった. 血中インスリン濃度はPEPCK活性の推移とよく対応し,その低下が誘導因子の1つである可能性が推定された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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