糖尿病
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多彩な合併症が認められた高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡の1例
多田 久也井口 利樹安川 透水入 苑生磯貝 庄
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1986 年 29 巻 10 号 p. 959-964

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抄録

高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡 (以下HNKDCと略す) にrhabdomyolysis, 腎不全, DICならびに呼吸不全と多彩かつ重篤な合併症を伴ったにもかかおらず, 救命し得た極めて稀な症例を報告した.
症例は21歳男性で, 昭和60年7月中旬口渇, 多飲, 多尿出現し, 同月27日意識混濁となり某医にて糖尿病性昏睡の診断の下に加療をうけたが, 悪化したため8月1日転入院した.入院時昏睡状態, 浅表性呼吸, 著明な脱水, 赤褐色尿を認め, 尿ケトン体陰性, 血糖518mg/dl, 血清浸透圧424mOsm/kgH2O, 血清クレアチニン3.0mg/dlであった.動脈血pH7.218, PaCO261.5mmHg, BE-4.3mEq/lで, CPK16590mU/ml, 血清ミオグロビン250×104ng/mlと, 著しい上昇をみた.凝固系検査からDICと思われた.生検では, 変性に陥った骨格筋線維と腎尿細管壊死を認め, rhabdomyolysisが強く示唆された.補液とインスリン少量持続注入を開始し, 呼吸不全にはventilatorを適用, DICにはFOY 1000mg/日を投与した.経過中無尿となり, 血液透析を行った.これらの治療により, HNKDCをはじめすべての合併症は改善され, 救命し得た.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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