糖尿病
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糖尿病患者における持続性蛋白尿の出現頻度とその関連因子
佐々木 陽堀内 成人長谷川 恭一上原 ます子
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1986 年 29 巻 11 号 p. 1017-1023

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抄録

初診時に蛋白尿 (-) もしくは (±) であった糖尿病患者からの持続性蛋白尿の発生の頻度ならびに, その危険因子を長期経過観察により検討した. 対象は当センター登録のII型糖尿病患者 (NIDDM) 1,196名で, 昭和59年末まで平均10年間追跡した.
1) 持続性蛋白尿の発生をみたのは193例 (16.1%) で, 男に多く, 糖尿病の発症からの経過年数は平均11.1±6.9年であった. 持続性蛋白尿の発生したものからは66例 (34.2%) が観察期間中に死亡し, その他のものからの死亡174例 (17.6%) に比して著しく高率であった. また持続性蛋白尿出現から死亡までの期間は平均3.0年で, 生命予後が不良であった.
2) 持続性蛋白尿の平均年間発生率と各種危険因子との関連性を検討すると, 初診年齢, 罹病期間, 収縮期血圧, 空腹時血糖値, 糖尿病性網膜症, 治療方法と有意の関係があり, また初診時尿蛋白 (±) のものは (-) のものに比して明らかに高い発生率がみられた.
3) 持続性蛋白尿の発生の有無別に初診時における各種因子を比較すると, 持続性蛋白尿発生群では罹病期間が長く, 収縮期血圧も高く, 糖尿病性網膜症を合併するものが多かった. また, 空腹時血糖値も高く, 経口剤およびインスリン治療のものが相対的に多く認められた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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