糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病性血管障害の成因に関する研究 (第6報)
Hyperinsulinismと実験的動脈硬化様病変
白石 三思郎佐藤 祐造押田 芳治吉岡 健太郎坂本 信夫山田 和順
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 29 巻 2 号 p. 113-120

詳細
抄録

われわれは, すでに糖尿病患者の長期臨床的観察により, 過インスリン血症の動脈硬化性血管障害の進展に対する多大なる関与を示唆する結果を得ている.そこで今回は, インスリンの血管壁への長期にわたる代謝効果を動物実験的に検討した.
体重200g前後のWistar系雄性ラットをインスリン群 (I群: N=25), 生食群 (S群: N=15) の2群に分け, 前者にはレンテインスリンを20単位/kg.後者には生食水を毎日皮下注し, 12ヵ月後, 生化学的および形態学的検索を加えた.
血液生化学的成績は, リン脂質および遊離コレステロール値が前者に大であった (p<0.05).
大動脈壁脂質分析結果は, 中性脂肪値が前者に大であり (p<0.05), 中性脂肪/リン脂質 (p<0.05) および中性脂肪/総コレステロール比 (p<0.01) はともに前者で大であった.
大動脈壁形態学的所見は, 光顕的にI群内膜はS群のそれに比し明らかに肥厚し, その組織は, エオジン好性線維束, 無定形基質および不規則に配列する長楕円形核を有する細胞より構成され, 電顕的に同部の線維質は, 膠原ならびに弾性線維様構造を示し, それらの細胞は, 細胞質内の徴細構造と形質膜下の表面小胞の存在より, 平滑筋性と考えられた.
われわれは, インスリンの長期投与により, ラット大動脈に動脈硬化様病変を発症せしめることが可能であった. 以上の事実は, 過インスリン血症が糖尿病性動脈硬化様病変の発症進展に重要な役割を果たしていることを示唆している.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top