糖尿病
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糖尿病における尿蛋白分析の臨床的意義 (第2報)
糖尿病性腎病変の進展予知について
猪股 茂樹伊藤 万寿雄大沢 佳之井上 正則正宗 研
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1986 年 29 巻 2 号 p. 121-129

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抄録

糖尿病患者55例 (A群: 蛋白尿陰性41例, B群: 間欠性蛋白尿5例, C群: 持続性蛋白尿9例) を対象に, SDS-polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) を用いて尿蛋白組成を分析し, その結果と腎生検, 尿中アルブミン排出率 (Albumin excretion rate: AER, μg/min) さらに最高3年にわたる尿蛋白の追跡調査などを対比し, 以下の成績を得た.
(1) 糖尿病の罹病期間が比較的短く糸球体びまん性病変が (1~) 2度であれぽ, 尿蛋白泳動パターンはT型を示した.安前時AERは血糖コントロールが良好であれば正常であった.
(2) 罹病期間が長く糸球体びまん性病変が2~3度あるいは3度となれば, 尿蛋白泳動パターンはIV型かG型を示した.安蓄時AERは血糖ロントロールが良好でも上昇する傾向にあった.半数以上の症例に網膜症があり, 増殖性網膜症もみられた.
(3) この時期になると, 比較的短期間で間欠性あるいは持続性蛋白尿へ進展する可能性があった.
(4) 腎病変の進展を抑制するには, 少なくともHbA1が8.0%以下になるように血糖を管理する必要があると考えられた.
以上から, 糖尿病性腎病変の進展に伴って変化する微量尿蛋白の組成を, SDS-PAGEによって捉える方法は, 早期腎病変の把握や持続性蛋白尿の出現予知を可能にする臨床上有力な手段の1つであることが明らかになった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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