糖尿病
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糖尿病患者における味覚域値
糖尿病性神経障害, 特に心電図R-R間隔の変動係数との関連性について
里神 永一三家 登喜夫近藤 渓南條 輝志男江本 正直宮村 敬
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1986 年 29 巻 3 号 p. 197-203

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抄録

糖尿病 (DM) 患者において, 味覚域値を測定しその臨床的意義を検討した. さらに心電図R-R間隔の変動係数 (CV) との関連性についても検討した. 味覚域値は健常者109名, DM患者112名を対象に電気味覚計610-M (MEC, 東京) を用い, 舌前方部鼓索神経領域で測定した. CVは健常者160名と前述のDM患者を対象として, 15分間安静仰臥位後Autonomic-R100®(MEC, 東京) を使用し求めた.
健常者, DM患者とも加齢とともに味覚域値は上昇し, CVは低下した. 味覚域値は30歳~60歳のDM患者では, 同年代の健常者に比し有意に上昇していた. DM患者ではその罹病期間が長くなるほど, DMのcontrol状態が悪くなるほど, 味覚域値は上昇し, CVは低下した. DM性神経障害の自覚症状を有す患者やアキレス腱反射 (ATR) 消失患者では, 自覚症状のない患者やATR正常患者に比し, 有意な味覚域値の上昇およびCVの低下を認めた. DM性網膜症の進展に伴い味覚域値は上昇し, 蛋白尿陽性患者群のCVは低値であった. DM性神経障害の自覚症状, 網膜症および蛋白尿の3者とも有さずATR正常のDM患者でも, 年齢を対比させた健常者に比し味覚域値は有意の高値を示し, CVは低下する傾向を示したことより, 味覚障害や自律神経障害は, なんら合併症がないと思えるDM患者においてさえ進行しはじめているものか, または, これらの指標が他のものより鋭敏であることが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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