糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病の運動療法に関する研究 (第9報)
肥満者および肥満糖尿病者のトレーニングとインスリン感受性
佐藤 祐造早水 サヨ子白石 三思郎坂本 信夫山之内 国男
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 29 巻 4 号 p. 331-337

詳細
抄録

運動療法の長期効果に検索を加える目的でeuglycemic insulin clamp法を用いて, 肥満糖尿病者および単純性肥満者のトレーニング前後におけるインスリン感受性の変動に検討を加えた.
対象は肥満糖尿病患者5例 (肥満度: 136.8±5.8%), 単純性肥満者7例 (144.4±7.0%), 鍛練者10名 (95.4±1.4%) および健常非肥満対照者18名 (94.9±1.8%) である. この中, 肥満糖尿病者および単純性肥満者各4例, 合計8例には4~8週間, 1,000~1,600kcalに食事制限の上, 1日ジョギング2km走または, 最低1万歩の歩行を行わせ, トレーニング前 (pre), 後 (post) で比較した.
肥満糖尿病者, 肥満者のグルコース代謝量 (M) はそれぞれ, 3.67±0.33, 3.01±0.21mg/kg/minといずれも対照群の7.46±0.22mg/kg/minより有意に (p<0.001) 低値であり, 一方鍛練者のMは11.63±0.65mg/kg/minと対照群に比して有意に (p<0.001) 大であった. Mと肥満度との間にはr=-03.883と有意の (p<0.001) 負の相関関係が認められた. 血糖値差の影響を除いたMCRでも同様の成績が得られた. トレーニングにより肥満者の体重は6.1±1.2kg減量し (p<0.005), Mはpreの3.17±0.20がpostには4.00±0.35mg/kg/minと約26%増加した (p<0.05). MCRもpreの2.70±0.31がpostには4.20±0.55ml/kg/minと約56%増加した (p<0.01).
以上の事実は適切な食事療法に加えて運動療法の長期実施を行えば肥満糖尿病者, 肥満者で低下しているインスリン感受性が改善することを裏付けている.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top