糖尿病
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インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者における運動時の交感神経, 内分泌反応
安静時心拍変動係数 (CVR-R) との関連について
大星 隆司
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1987 年 30 巻 2 号 p. 105-112

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抄録

インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者で運動療法の適応を明確化するため, 増殖性網膜症や腎機能障害のないNIDDM患者27例に14~15時間絶食下で標準体重1kg当たり1ワットの自転車エルゴメーター運動を20分問負荷し, 代謝, 内分泌および交感神経反応 (心拍数, 尿カテコラミン (CA)) を検討した.
NIDDM患者全体について重回帰分析をおこなった結果, 通常呼吸時の心拍変動係数 (CVR-R) と血清遊離脂肪酸 (FFA), 3-ヒドロキシ酪酸 (3-OHBA), コルチゾール (cortisol) 濃度およびクレアチニンクリアランス (Ccr) で補正した尿ノルアドレナリン (NA) 排泄量の変化がそれぞれ相関した.
次にNIDDM群よりCVR-R値2%未満のA群 (n=7) とCVR-R値2%以上のB群 (n=9) を選ぶと, 両群間で年齢, body mass index (BMI) および絶対的運動強度 (ワット) に差はなかったが, A群で1) 心拍数の回復およびCA反応が遅延し, 2) FFAは漸増し, その運動終了後30分 (“50分”) の値はB群より高値の傾向で, 3) 血漿グルカゴン (IRG) 反応は増大し, 4) cortisolの運動終了直後 (“20分”) の値はB群より高値であった.
心拍変動係数低下のあるNIDDM患者では運動時の交感神経反応は遅延し, IRGやcortisolはこの遅延を部分的に代償するために増加した可能性がある. また運動後のNA値がA群でより高かったことは血管合併症の進展や突然死の危険性がより高いことを裏づけている.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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