糖尿病
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中間型インスリンと速効型インスリンの混合注射時における血糖, 遊離インスリン, 遊離C-ペプチドの日内変動
レンテ系インスリンとNPHインスリンの比較
吉岡 成人熊倉 忍山本 律子謝 勲東岩本 安彦松田 文子葛谷 健
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1987 年 30 巻 3 号 p. 243-248

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抄録

インスリン治療中の糖尿病患者では血糖の良好なコントロールを得るために, 中間型・速効型インスリンの混合注射が頻用されている.レンテ系インスリンと速効型インスリンを混合した際は, 速効型インスリンの急速な吸収が妨げられ, その作用が減弱し食後の高血糖をきたしやすいとされている.われわれは8人の糖尿病患者に,(1) レンテ系 (モノタード®) +速効型 (アクトラピッド®),(2) NPH (インスラタード®) +速効型 (ヴェロスリン®) の双方の組合せで治療をおこなった際の, 血糖, 遊離インスリン, 遊離C-ペプチドの日内変動を測定し比較検討した。その結果,(1),(2) の間で, 血糖のM値, 平均値, 最高最低差には有意差を認めなかった。しかしIDDMにおける1日の血糖プロフィルでは,(2) で朝食後の血糖上昇が抑えられる傾向はあるが, 逆に午後の高血糖は (1) のほうがよく抑えられる傾向を認めた。(1) では速効型インスリンの作用が遅延するが, 昼食後の遊離インスリンは (2) よりも高く保たれ, このことが血糖値の差異に対応すると思われた.遊離C-ペプチドの動態には差がなく, 以上の血糖, 遊離インスリンの変化はインスリン製剤の違いによるものと考えられた。NIDDMでも同様の傾向が認められたが, 製剤による違いはIDDMの場合ほど明らかではなく, 内因性インスリンの分泌が, 注射によるインスリンの不足分を補償するためと考えられた。インスリンの混合注射に際しては, 製剤の組合せによる血中インスリン動態に差異はあるものの, 日常の臨床における製剤の組合せは, 実際に使用して血糖日内変動を調べた上で選択すべきものと考える.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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