われわれは, dithiothrcitol (DTT) によるrat肝および大脳皮質細胞膜インスリン受容体S-S結合の還元が, 受容体の機能とsubunit構造に及ぼす影響について検討した.細胞膜を各種濃度DTTで処理すると, 膜への125I-インスリン結合は, DTT濃度依存性に増加した.最大結合は, 肝および大脳皮質細胞膜をおのおの3, 30mM DTTで処理したときに認め, これら膜へのインスリン結合をScatchard解析すると, 結合の増加は, いわゆる高親和性部位の結合親和性の増加によるものであった.disuccinimidylsubcratcを用いた125I-インスリンと受容体のcross-linkingののち, 電気泳動にてこれら膜蛋白を解析すると, α β, α subunitと思われる膜蛋白の標識強度は, 最大結合を認めたDTT濃度で最大であった.さらに, 30mM DTTで部分還元した肝, 大脳皮質細胞膜のα subunitと思われる120,110kDaに標識された膜蛋白は, cross-linking後, DTT存在下で電気泳動すると, おのおの130,120kDaへと移動した。また, 部分還元したαsubunit膜蛋白のみを還元剤存在下で二次元電気泳動すると, 分子サイズがさらに10kDa増加することから, αsubunit内S-S結合の存在が示唆された.以上の成績より, 部分還元したインスリン受容体が, 非処理受容体に比して親和性が増加し, αsubunitには, subunit内S-S結合が存在して, インスリン結合に関与する可能性が示唆された.