糖尿病
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糖尿病性合併症と尿C-peptide-like Immunoreactivity (CPR)
川合 厚生島田 典生飯塚 孝益子 茂原 陽子赤沼 安夫
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1987 年 30 巻 7 号 p. 587-593

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抄録

糖尿病性合併症の進展に, 残存B細胞機能がいかに関与lているかを検討する目的で, コントロール是正のため入院した糖尿病患者188名を無作為に選出l, 治療法とは無関係に尿中CPR排泄量別に, 低下 (30μg/日未満), 中間 (30以上60μg/日未満) および正常 (60以上90μg/日未満) 群の3群に分け, 各群における糖尿病性細小血管症および大血管症の出現率を観察した.罹病期間10年未満の患者では, 尿CPR排泄量と合併症出現率との間に相関は認められなかった.これに対し, 罹病10年以上の患者では, 尿CPR排泄量が30μg/日以下の者は, それ以上の2群に比して腎症 (蛋白尿), 網膜症 (Scott1度以上) および神経症 (アキレス腱反射消失) とも揃って有意に高率に出現した.また, 罹病期間の長短で比較すると, 尿CPR低下群においては, 3症とも揃って, 10年以上の罹病者が10年未満の者に比して出現率が有意に高かった.同様の有意差は尿CPR中間群においても, 網膜症と神経症の出現率において認められた.しかし, 糖尿病性大血管症 (レ線上大動脈石灰化像および虚血性心電図変化) の合併率には, 尿CPR排泄量に関連した差異は認められなかった.以上の成績より, 糖尿病性細小血管症の進展には, 罹病期間の延長とともに残存B細胞機能の低下が関与していることが推定される.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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