糖尿病
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ジアゾキサイドが有用であったインスリノーマの1例
人工膵島を用いた検討
須田 成彦佐藤 潤一秋山 悟高桑 博鳥居 宣夫添田 仁金沢 真雄植木 彬夫能登谷 洋子伊藤 久雄
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1987 年 30 巻 9 号 p. 859-864

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抄録

要約: 重篤なる低血糖発作を頻発するインスリノーマ患者において, 術前に低血糖に対しジァゾキサイドを投与し, 血糖維持に有効であることを人工膵島にて確認した症例を経験したので報告する. 症例は70歳男性, 68歳時より早朝意識消失発作ありインスリノーマを疑われて当科入院, 入院後, 腹部血管造影にて腫瘍が確認された. 空腹時血糖12mg/dl, IRI (nmunorcactiveinsulin) 16μU/mlであり, 低血糖発作頻発のため, 血糖のコントロールには中心静脈カテーテルより高濃度のブドウ糖投与を必要とし, さらに術前にジァゾキサイド200mg/dayを経口投与した. ジァゾキサイドの血糖上昇作用を定量的に表すため, 人工膵島を用い2000Calの食事下にて血糖を80mg/dlに保つために必要な経静脈的ブドウ糖投与量を, 午後2時より翌日午前8時までの18時間について測定した. その結果ジァゾキサイド投与前の必要量は1209, 投与後は389と血糖の維持にジァゾキサイドの有効性が確認された. 本例では手術的に直径約10mmの腫瘍および米粒大の腫瘍2個の存在が確認された. 腫瘍インスリン含量は17.8U/wt.g. であり, ゲル炉過像では大分子インスリンが72.4%を占めた. 本例は術後低血糖発作なく軽快した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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