糖尿病
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ジアゾキサイドで治療中非ケトン性高浸透圧性昏睡で死亡した特異な肝転移を伴う悪性インスリノーマの1剖検例
藤田 芳邦重井 博文野々村 弥生金森 晃的場 清和矢島 義忠岡部 治弥大野 司佐藤 友昭亀谷 徹西川 隆
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1988 年 31 巻 1 号 p. 53-60

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抄録

症例は83歳女性.71歳時にインスリノーマ (イ) で膵体尾部切除を施行.72歳時より再び低血糖症状が出現したが放置, 79歳時に低血糖性昏睡で入院した.インスリン/ブドウ糖比 (μU/mg) は3.0, 腹腔動脈造影で肝に米粒大の腫瘍陰影を多数認め, 悪性 (イ) の肝転移と診断した.ジアゾキサイド (DAX) 75mg/日の経口投与でI/G比は0.2となり血糖調節は可能となった.しかし, DAXの中断で低血糖を起こした.83歳時, 発熱を契機に全身状態が悪化.DAXを減量したが非ケトン性高浸透圧性昏睡 (NKHC) を起こし, 死亡した.病理解剖では残存膵に腫瘍はなく, 肝臓に多数の小転移巣を取り囲む限局性脂肪化巣を認めた.
低血糖は肝転移巣からのインスリン過剰分泌によるものと考えられた.DAXは血糖調節に有効であったがNKHCの誘因となった可能性もあり, 高齢者への投与は特に注意を要する.限局性脂肪化巣の報告は皆無であった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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