1988 年 31 巻 10 号 p. 793-800
インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 患者276例と健常者44名の血清尿酸値と尿酸排泄について検討した.その結果, 尿蛋白陰性のNIDDM患者204名の尿酸値は, 健常者に比べ有意に低値を示した (男: 5.21±1.33mg/dl vs. 6.52±1.48, p<0.001;女: 4.57±1.17 vs. 5.37±1.24, p<0.01).また, 尿蛋白陰性例の尿酸値は男女とも, 食後2時間血糖値と負の相関を示した (男: r=-0.239, p<0.05, 女: r=-0.208, p<0.05).尿蛋白陰性例100例と健常者とについて, 腎機能の諸示標を比較したところ, 血中尿素窒素, クレアチニン, クレアチエン・クリアランス (Ccr), 尿酸排泄量に差はなく, 尿酸クリアランス (Curate) のみ, NIDDM例は高値を示した (男: 5.90±3.37ml/min/1.48m2 vs. 4.43±1.64, p<0.05;女: 6.77±3.39 vs. 4.93±2.50, p<0.05).一方, 尿蛋白陰性NIDDM例と72名の陽性例の尿酸値を比較したところ, 利尿剤の使用にかかわらず, 尿蛋白陽性例の尿酸値は高値を示したが, これらの症例全体では, Curate/CcrはCcrと負の相関を示した (男: r=-0.401, p<0.001, 女: r=-0.308, p<0.01).以上より, NIDDM患者のCurateは亢進しており, このために, 尿蛋白陰性例では低尿酸血症を示すものと考察された.