糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病患者に認められた黄色肉芽腫性腎周囲膿瘍の1例
永井 隆吉江 康正冨沢 貴小林 節雄
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 31 巻 9 号 p. 767-772

詳細
抄録

糖尿病患者に認められた黄色肉芽腫性腎周囲膿瘍の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は, 糖尿病を指摘された後, 3年間放置していた56歳の女性で, 不適切な治療によりしばしぼ尿路感染症を繰り返していたが, 腰痛強, 発熱があり, 尿沈渣中に白血球多数で, 尿培養では, 大腸菌が検出された.糖尿病のコントロールは不良であり空腹時血糖は290mg/dlで高脂血症も認めた.右腰背部に手拳大で弾性硬で圧痛のある腫瘤が触知され, この部を切開し, 右腎周囲の被膜に包まれた塊状物より黄白色の混濁液が吸引された.組織学的に多数の泡沫細胞の浸潤が認められ黄色肉芽腫性腎周囲膿瘍と診断した.黄色肉芽腫性腎周囲膿瘍と糖尿病との合併例の報告は初めてであり, 本症の発症には放置された糖尿病, 慢性の尿路感染症, 高脂血症の関与が示唆され, その発症予防には, 糖尿病の厳格な管理とともに感染症の早期かつ適切な化学療法が重要と思われた.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top