糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
2年間の観察期間における糖尿病患者の聴性脳幹反応の変化
小野 百合加藤 雅彦対馬 哲工藤 守中川 昌一
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 32 巻 3 号 p. 189-193

詳細
抄録

糖尿病慢性合併症の一つである神経障害のうち, 中枢神経機能に関して, 適切な検査法として最近聴性脳幹反応 (Auditory Brainstem Response: ABR) が注目されており, 近年, 糖尿病患者においてもABRの各波潜時および, Interpeak latency (IPL) の延長の報告がみられている.今回, 同一20症例につき2年間の観察期間を経てABR潜時が変化するかいなか, また, 変化するとすれば, どの部位が延長するか, どのような場合に延長するかにつき検討したので報告する.
22歳~54歳の糖尿病患者20名を対象とし, DISA system 1500を用い80dB~120dB刺激時のABRを測定した.
1) 2年間に, ABRは, I波, III波, V波潜時ともに延長していたが, その延長は主に末梢神経側のI波潜時の延長によるもので, 中枢神経側の変化は少なかった.2) 2年間における末梢神経伝導速度の変化とABRの末梢神経側を示すI波潜時の変化とはほぼ一致した.3) ABR各波潜時の延長に関与する因子としては, 糖尿病患者の腎機能の悪化が推定された.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top