糖尿病
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断食中に発症した高浸透圧性非ケトン性昏睡の1例
吉野 博子米満 春美荷見 澄子雨宮 禎子平田 幸正
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1991 年 34 巻 11 号 p. 1001-1006

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抄録

症例は糖尿病の既往のない50歳のインドネシア人男性で, 断食 (ラマダーン) 開始後11日目に傾眠傾向に陥った.来院時, 著明な脱水を認め, 著しい高血糖 (734mg/dl) と高ナトリウム血症 (151mEq/l) により血清浸透圧の上昇 (363mOsm/kg) を来たしていた.動脈血ガス分析では, pH7.321, PaO2 80.3mmHg, PaCO2 41.4mmHg, HCO-320.9mEq/lであった.高浸透圧性非ケトン性昏睡と診断後, ただちに0.45%食塩液の補液と速効型インスリンの持続静脈内注入 (CVII) を行ない, 脱水の改善と血糖の低下と共に意識状態も回復した, 高浸透圧性非ケトン性昏睡の誘因の多くは, 医原性であり注意を必要とすることはよく知られているが, 本例のような断食中に発症した症例の報告は見られず, 糖尿病者のラマダーン中における脱水に対しては十分な配慮が必要であることを示した1例である.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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