糖尿病
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進行した糖尿病性細小血管症における血漿Soluble Fibrin Monomer Complexes濃度とそのSolubilityに関する研究
五日市 敬
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1991 年 34 巻 5 号 p. 417-424

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抄録

進行した糖尿病性細小血管症 (細小血管症) における血漿soluble fibrin monomer complexes (SFMC) のsolubilityに関しては明らかでない.本研究はこの点を究明する目的でHbA110.0%以下の糖尿病60例につき血漿fibrinogen (Fbg), fibronectin (Fn), SFMCの各濃度を測定した.さらにSDS-polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) を行ない, SFMC中のFn,α,β,γ分画を求め検討した。その結果, 糖尿病性網膜症の進行, 蛋白尿の増強につれFbg, Fn, SFMCの各濃度は上昇し, SFMC中のFn/fibrin (ogen) ならびにFn/α-fractionはともに大となり, このさいFnとfibrinは非共有結合の状態にあった.さらに, fibrin (ogen) を100としたさいのα分画の占める割合には, 細小血管症の程度により差を認めなかったが, SFMC中のFn分画は細小血管症の進行した群で大となった.
以上より, 進行した細小血管症ではFn含量の多い, したがってfibrin monomerのsolubilityの高いSFMCが大量に生じ, 血管壁上へのfibrin沈着を防止すると考えられる.すなわち, chronic low grade disseminated intravascular coagulationの代償期にあると思われる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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