1991 年 34 巻 9 号 p. 809-815
症例は24歳, 男性.1990年4月23日全身倦怠を自覚, 口渇, 体重減少, 上腹部痛も出現したため近医受診, 高血糖 (468mg/dl) を指摘され, インスリン療法を開始された.当科入院時FPG148mg/dl, HbA1c 7.8%, 尿中CPR 9.9μg/日, ICA陰性.発症2カ月後の生検膵組織の免疫組織化学的分析により, 1) 膵島の萎縮, 2) B細胞の著減, 3) 膵島細胞と血管内皮細胞におけるMHCクラスI抗原発現の増強, 4) 一部膵島に散在性に数個のT, Bリンパ球, マクロファージの浸潤が認められた.本例では, モノクローナル抗体と抗膵ホルモン血清を用いた二重蛍光抗体法により, 通常の光顕では検出し得ないわずかな細胞浸潤の存在が証明された.膵島炎の頻度が少ない日本人IDDMの病態分析において, このような二重染色を用いた免疫組織化学的方法が有用と考えられる.