糖尿病
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糖尿病と妊娠
初期の器官分化過程のembryoにおけるブドウ糖代謝の特異性
赤澤 昭一赤澤 美保子前田 恭男高尾 幸男川崎 英二奥野 信一郎竹馬 庸裕瀧野 博文横田 厚長瀧 重信
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1992 年 35 巻 10 号 p. 797-801

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抄録

rat embryo cuiture systemを使用し, 妊娠第10日, 11日にラベルした (U-14C, 1-14C or 6-14C) ブドウ糖を用い, 4時間培養を行い, ratのeariy organogenesisにおけるブドウ糖の代謝を検討した. 妊娠第10日のembryoにおいてはブドウ糖の消費率, 乳酸産生率はきわめて高く, 消費されるブドウ糖のほとんどが乳酸に変換された (89.63±2.78%). 妊娠第11日にはブドウ糖の乳酸への転換率は有意に減少した (73.53±2.74%, P<0.01). U-14C-giucoseを使用し, 全ブドウ糖消費量に占める酸化率を測定すると妊娠第10日は0.75±0.04%ときわめて低かったが, 妊娠第11日には, 3.83±0.35%(P<0.01) に増加した. Katzらの方法を用い, 全ブドウ糖消費量に占めるpentose cycleで酸化されるブドウ糖の比率を測定すると妊娠第10日には0.60±0.03%, 妊娠第11日には1.41±0.05%であった. 以上の事実より, organogenesisのごく初期 (妊娠第10日) のembryoはそのエネルギー産生を完全に嫌気的解糖系に依存しており, 酸化に利用されるブドウ糖のほとんどがpentose cycleで消費されていた. 胎盤循環のもととなるailantoic circuiationの開始により酸素の獲得が容易になるにつれ, 嫌気的解糖系によるエネルギー産生は少なくなり, TCA cycieのactivityが出現する事を示した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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