1992 年 35 巻 6 号 p. 479-486
糖尿病集団特性の経年的変化を明らかにするため, 1957年~85年の29年間に東京大学第三内科糖尿病外来を受診したインスリン非依存型糖尿病2, 083例 (男1, 180, 女903) の糖尿病歴を検討した. 経年的に診断年齢は低下し (以下1950年代後半と1980年代前半で各49±12歳, 47±12歳), 初診までの罹病期間は延長した (各4±6年, 7±7年). 自覚症状の頻度は, 診断時 (各92%, 4%) と初診時 (各72%, 38%) のいずれもほぼ半減し, 糖尿病家族歴は倍増した (各22%, 46%). 初診前治療法は, 経口剤の割合が1970年代を境とし前半に急増し, 後半に急減した. 性差, 初診年齢, 過去最大肥満度, 高血圧家族歴は経年変化を認めなかった. 本成績より, 近年わが国の糖尿病患者は早期に不顕性で発見されるようになったことが確認された. また大学病院受診患者は初診までに年月を経て多くの修飾を受けた集団となっている可能性が示唆された