1992 年 35 巻 8 号 p. 633-640
インスリン (Ins) 治療糖尿病患者における二糖類分解酵素阻害剤AO-128の有用性を検討した. 入院および通院中のIns治療NIDDM 27例, IDDM 17例を対象とし, AO-128を0.6mg/日, 8週間経口投与し, 治療開始前・開始後4週・8週および投与終了時4週で, 朝食負荷後の血糖応答, HbA1c, fructosamine (FRT), Ins使用量を経時的に追究した. 血糖応答はNIDDM, IDDM共にAO128投与4週で有意に改善し, この傾向は8週目まで持続した (血糖曲線下面積: NIDDM;484±140→414±114, IDDM: 574±120→440±153mg・hr/dl). NIDDMではHbA1c, FRTは有意に改善し (8.6±1.7→8.1±1.4%, 374±84→358±76μmol/l), Ins使用量も有意に減じた (27.4±13.8→26.0±14.OU/日). IDDMではこれらの変動が有意ではなかったが, 投与終了後に前値に復する傾向を認めた. 腹部症状等の副作用, 低血糖を2例に, GPT上昇を3例に認めたが, その程度は1例を除き軽微であった. 以上, AO-128はIns治療糖尿病患者においても血糖管理を容易にし, 臨床的に有用であった.