Sulfonylurea剤 (SU剤) の1つであるglibenclamideの経口投与がアロキサン糖尿病の発症促進, 高血糖に及ぼす影響を一晩絶食させたラットを用いて検討した. 単独では糖尿病を発症させることのない少量のアロキサン (120mg/kg) 投与でも, 0.3mg/kg以上のglibenclamideを2時間前に前投与することにより, 起糖尿病作用を示した. また, 140mg/kg以上のアロキサン投与による高血糖も, 0.3, 0.4mg/kg glibenclamideの前投与によりさらに顕著となった. 摂食ラットでは絶食ラットに比し, アロキサン感受性が低下しており, 本研究でも250mg/kgのアロキサンで初めて糖尿病が発症したが, 0.3mg/kgのglibenclamideを投与すると, 摂食ラットでも140mg/kgのアロキサンで糖尿病が発症し, 対照群との差がより明白に認められた. しかし, 予め1u/kgのインスリンを筋注して低血糖状態にしても, アロキサン糖尿病の発症には影響がみられなかったことから, glibenclamideのアロキサン糖尿病発症促進作用は, この薬剤による血糖降下の二次的現象ではなく, 膵B細胞に対する何らかの直接作用と考えられ, この面から考察を加えた. なお, glibenclamideのclinical doseではこのような作用が全くみられなかった. 本成績は糖尿病惹起物質と経口血糖降下剤の代表であるsulfonylurea剤との相互作用を示すものであり, それぞれの作用機序を考えるうえで, 興味ある現象で今後さらに詳細な検討が必要である.