糖尿病
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CD8+Tリンパ球主体の膵島炎を認めたインスリン依存型糖尿病の1例
生検膵組織における検討
今川 彰久伊藤 直人花房 俊昭宮崎 厚三木 啓之宮川 潤一郎山縣 和也和栗 雅子田村 信司難波 光義河田 純男桑島 正道河野 典夫松沢 佑次
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1993 年 36 巻 11 号 p. 875-880

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抄録

症例は22歳, 女性. ケトアシドーシスにてIDDMを発症し, Basedow病を合併ICA陽性, HLA DR4/9. IDDM発症4カ月後に腹腔鏡下膵生検を施行, 生検膵組織の免疫組織化学的染色により, T, Bリンパ球, マクロファージなど多様な単核球の膵島への浸潤を認めた. T-リンパ球のサブセットではCD8+リンパ球が大多数 (53~86%) を占め, CD4+リンパ球は少数 (0~14%) であった.抗TCR抗体による検索ではαβTリンパ球, γδTリンパ球ともに陽性であった. 膵島細胞のうちα, δ細胞の数は保たれていたが, β細胞は著減していた. また膵島細胞におけるMHC class I抗原の発現増強, 膵島周囲の血管内皮細胞におけるclass I, II抗原の発現増強を認めた. これらの組織所見は, 主にCD8+リンパ球が膵島に浸潤し, 発現の増強したMHC class I抗原と共に自己抗原を認識して, β細胞を破壊する機序の存在を示唆していた. ICA陽性, 他の自己免疫疾患の合併等も, 本例の膵島炎の成立が自己免疫的機序によることを支持すると思われた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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