1993 年 36 巻 12 号 p. 897-901
日本人IDDM患者のmicroangiopathyの発現に対する罹病期間の影響を, 全罹病期間と思春期以降の罹病期間にわけ比較した. 対象はIDDM患者63人で, 網膜症はbackground retinopathy 以上を, microalbuminuriaは随時尿のアルブミン30mg/l以上を陽性とした. 網膜症を認めたのは15人で, 生存曲線を用いて, 全罹病期間を思春期前発症群と思春期以降発症群にわけ比較すると, 網膜症は思春期以降の発症群が有意に高率 (p=0.014) であったが, 思春期前を除いた罹病期間では両群に差はみられなかった. microalbuminuriaを認めたのは12人で, 全罹病期間に関しては思春期以降の発症群が有意に高率 (p=0.039) であったが, 思春期前を除いた罹病期間では差はみられなかった. 日本人IDDM患者のmicrovascular diseaseの発現には思春期以前の罹病期間はあまり影響をもたないものと思われる.