糖尿病
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著明な左右差を認めた糖尿病性網膜症の1例
飯野 研三吉成 元孝児玉 智行南 昌江岩瀬 正典藤島 正敏
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1993 年 36 巻 12 号 p. 931-936

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抄録
糖尿病性網膜症は通常左右両眼対称性に進行し, 内頸動脈が閉塞すると同側の網膜症が増悪する. ところが, 閉塞内頸動脈とは反対側眼のみに前増殖性網膜症の出現をみた症例を経験したので報告する. 6年前にNIDDMと診断された66歳の男性. 高血圧, 閉塞性動脈硬化症, ネフローゼ症候群を合併. 右眼視力低下を主訴に入院. gliclazideを内服しHbA1c8.1%. 右眼に前増殖性網膜症を認めたが, 左眼網膜症なし. 脳血管造影では, 左内頸動脈は完全閉塞し左眼動脈の血流は左外頸動脈から灌流. 一方, 右内頸動脈血流の一部は左大脳半球を灌流し, 右眼動脈の狭窄も認めた. 頭部CTでは右基底核, 左後頭葉側頭葉境界域に低吸収域を, Positron emission CT (PET) で同部分に脳血流量低下も認めたため, 左浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を施行. 網膜症の左右差は頭蓋内外の動脈硬化症の存在を示唆し, 血行動態を把握し網膜症の進展と脳血管障害の発症を予防することが必要である.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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