1993 年 36 巻 3 号 p. 185-194
血管内皮細胞 (EC) のグルタチオン依存性H2O2分解能が33mMグルコース (HG) 培養下に低下する (朝比奈ら糖尿病34: 593, 1991) 機序を解明するため, HG培養ECのNADPH量およびペントース燐酸経路 (PPP) 活性を検討した. ECのNADPH量は200μMH2O2により5.5mMグルコース (NG) 培養群および高浸透圧対照の27.5mMラフィノース (HR) 群では変化しなかったが, HG群で前値の58%に低下し (p<0.01), この低下は培地グルコース濃度依存性であった. 更にHG群の200μMH202によるPPPの活性化はNG群, HR群に比べ低値であった (NG群の66%, p<0.01). 一方, H2O2による乳酸放出の抑制はNG群に比べHG群で軽度であった (p<0.05). ピルビン酸はこれらHG群の異常を是正した. 以上より, HG培養ECではH2O2による解糖系の抑制が軽度で, PPPの活性化が低下し, 細胞内NADPH量が低下した. これらの異常はグルタチオンレドックスサイクル異常の一因となることが示唆され, またピルビン酸はこれら異常を改善した.