糖尿病性腎症の組織学的検索の多くは生検材料を対象とし, 腎全体からの構造的把握からの解析は少ない. 剖検腎を対象に次の3点に注目し, 形態計測を行った. 血管病変と糸球体病変との関係, 加齢高血圧の影響, 同年代の非糖尿病群との比較. 対象は非透析糖尿病性腎症70例, 非糖尿病50例を選択し, 腎重量, 皮質幅, 球状硬化糸球体率, 各動脈壁の内膜/中膜比, 細動脈硬化度を計測し, 高血圧等の臨床所見を含め統計学的に解析した.
糖尿病群では球状硬化糸球体率が非糖尿病群に比べて高度であり, 顕著な硬化を示す弓状動脈と細動脈の硬化度と高い相関を認めた. 加齢との相関が高い小葉間動脈硬化度は低く, 球状硬化糸球体率とは相関しなかった. 動脈樹の部位による硬化度が糖尿病や加齢により異なり, それに異質性が見られた. 浸出性病変は動脈硬化度に高い相関を認め続発的性格を示したが, 結節性病変はそれとの相関が低く, 糖尿病による固有の病変と思われた.