1994 年 37 巻 10 号 p. 725-730
我々は血中トロンボモジュリン (TM) が糖尿病, 特に合併症進展例で高値を示すことを報告した. しかし血中TMは非糖尿病疾患の血清クレアチニン値 (Cr) 上昇例でも高値を示す. 血清Crの影響を除外するため健常43例と非糖尿病透析17例より得られた回帰直線の式TM=9.44Cr+11.0を用い, 各Cr値の直線上のTM値を100%として糖尿病の各TM値を%で表現し検討した.糖尿病51例のTM値は146.7±63.8%(M±SD) で健常19例の98.9±17.2%より有意高値 (p<0.005) を示した.糖尿病性網膜症軽症群122.8±38.5%に対し中等症群185.3±81.0%と有意高値 (p<0.05) を示した.蛋白尿陰性群124.3±31.1%に対し高度蛋白尿を認める群208.2±73.9%と有意高値 (p<0.005) を示した.またTM値は糖尿病罹病期間と有意正相関 (r=0.290, p<0.05) を認め, 血清Crで補正した今回の検討でも, 糖尿病細小血管症と血中TM値との特異的な関係が示唆された.