糖尿病
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瞳孔緊張症を合併した糖尿病治療後神経障害 (post-treatment neuropathy) の1例
高橋 秀夫加畑 隆通早野 信也橋本 俊夫仁平 武田山 満男住谷 亮逸佐々木 英夫
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1994 年 37 巻 10 号 p. 753-757

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抄録

症例は29歳男性. 19歳時にIDDM発症. コントロール不良のまま8年経過した後に強化インスリン療法にて厳格な血糖コントロールを行なった. 1カ月後より下肢の疼痛, 上半身の発汗過多, 起立性低血圧, 両眼の羞明感を主症状としたpost-treatment neuropathyを発症した. 両眼とも対光反射は消失し, 近見反応ではゆっくりとしたtonicな縮瞳を示した. 左眼の瞳孔には副交感神経の再生によると思われる分節麻痺も認められ, 瞳孔緊張症と診断された. また, 通常の瞳孔緊張症と異なり, 両眼ともphenylephrineによる散瞳は良好であり, 交感神経の再生によると思われる過敏性も同時に存在していた. post-treatment neuropathyの病因も自律神経をはじめとした神経線維の変性と再生であると考えられており, 本症例のような長期間コントロール不良の糖尿病では, 急激な血糖降下の際には瞳孔の変化に関しても注意深い観察が必要であると思われた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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