抄録
欧米では多発性硬化症 (MS) の家系にインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) の頻度が高いとされているが, 本邦の報告は稀少である.NIDDMの経過中にMSの存在が明らかとなった1例を報告する.症例: 39歳, 女性.主訴: 構音障害.現病歴: 25歳時, 妊娠中に糖尿病を発見される.経口剤治療を中断後, 32歳時の硝子体出血後よりインスリン療法を開始.36歳頃より感覚鈍麻を自覚歩行困難と構音障害にて入院となる.尿中CPR排灘量やグルカゴンに対するCPR反応は良好であった.脳MRIにて多発性のT1強調画像にて低, T2強調画像にて高信号域を両側性に多数認めたが, 脳血流シンチグラム上は左右差なく正常であった.脊髄液検査にて蛋白, ブドウ糖IgGの上昇とともにオリゴクローナルIgGバンドを2本陽性に認め, MSと診断した.NIDDMの経過中に, 多発性脳硬塞類似の神経症状にてMSの合併が明らかとなった1例を報告した.