糖尿病
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ミトコンドリア遺伝子異常により発症したと思われる, 神経症状の乏しかった糖尿病の一家系
小田辺 修一佐倉 宏古賀 まり下川 耕太郎門脇 弘子山田 研太郎野中 共平赤沼 安夫門脇 孝
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1995 年 38 巻 3 号 p. 181-185

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抄録
症例は62歳, 女性.家族歴は息子が12歳時, 脳萎縮症の診断のもとに死亡.娘は現在28歳でIGT.発端者の妹とその娘に糖尿病歴あり.現病歴は, 49歳時近医にて高血糖を指摘され, 経口血糖降下剤にて治療を開始された.ほぼ同時期に両側性の難聴に気づくようになった.現在は, 中間型インスリンにてコントロール中である.糖尿病合併症は認められず, 心電図とエコーにより心肥大が疑われる所見が得られた.神経学的には, 両側性の高度感音性難聴以外有意な所見は得られなかった.遺伝子学的検討では, 発端者の末梢血より得られたミトコンドリアDNA (mtDNA) の3243番目のアデニンがグアニンへ変異していた.線維芽細胞の変異mtDNAの割合は, 末梢血のものに比べかなり高1直を示した.娘の末梢血からも同様に変異mtDNAが認められた.その娘の変異mtl) NAの割合は, 発端者の末梢血のものと比較して高値であった。発端者の娘は現在, 耐糖能は軽度で神経症状も認められないが, 将来的に膵B細胞からのインスリン分泌低下による糖尿病が出現することが示唆された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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