1995 年 38 巻 4 号 p. 247-253
1971年6月-1979年12月に糖尿病増殖網膜症にxenon arcによる選択的光凝固療法 (光凝固と略) を施行した症例 (139名, 200眼) の光凝固10年後の, 網膜症と全身状態を検討した.139名の10年後の転帰は通院中68名 (48.9%), 死亡29名 (20.9%), 通院中断42名 (30.2%) であった.死因は脳, 心血管障害, 腎不全, 感染症の1頂であった.中断理由は18名が通院困難のため近医へ紹介, 24名は不明だった.中断直前の網膜症は光凝固前と比べて改善・不変39眼で, 16眼が進行していた.通院中の68名 (104眼) の10年後の網膜症の推移は, 準行33眼 (31.7%) で, 改善・不変は71眼 (68.2%) だった.眼底所見は非増殖型が55眼, 増殖型が49眼 (うち17眼は失明) だった.多変量解析で性, 年齢, 罹病期間, 血糖コントロール状態, 腎症進行有無, 10年間のBMI, 血圧, 脂質の平均値そして心電図異常有無のうち, 網膜症進行には長期の血糖コントロール不良状態が関与していた.