抄録
糖尿病性自律神経障害評価のために, MemCalc 1000を用いて100心拍のR-R間隔変動幅の周波数解析をMEMにより行った. 副交感神経機能を反映する高周波領域の区分積分値は深呼吸負荷で有意に増加し, R-R間隔変動幅の標準偏差, ひんじ散布度と共に深呼吸負荷が副交感神経機能評価に有用であった. 高周波領域の区分積分値増加例では交感神経機能を表現する低周波領域の区分積分値も増加し, 深呼吸負荷時の変化も大きい. 深呼吸負荷時の区分積分値は副交感神経と同時に交感神経機能評価にも有用な指標になり得ると考えた. Sympathetic skin response (SSR) は無髄C線維機能の評価法であるが, 深呼吸負荷時に低周波領域の区分積分値が増加しない例では, SSR潜時は延長, 振幅は低下するか, no responseであった. また, 心筋シンチグラムで交感神経障害が示唆された例でも低周波領域の区分積分値は明らかに減少し, 区分積分値は自律神経機能の有用な指標になり得ると考えた.