糖尿病
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アンケート調査による日本人糖尿病の死因
1981-1990年の10年間, 11,648名での検討
坂本 信夫堀田 饒豊田 隆謙池田 義雄松岡 健平春日 雅人吉川 隆一
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1996 年 39 巻 3 号 p. 221-236

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抄録

アンケート調査の方法で, 全国225施設から, 11,648名が集計され, 1981-1990年の10年間の日本人糖尿病患者の死因が分析された. 11,648名中2,289例が剖検例で, 主な結果は以下の通りである.
1) 全症例11,648名の死因の第1位は血管障害 (糖尿病性腎症, 虚血性心疾患, 脳血管障害) の39.3%, 第2位が悪性新生物の29.2%, 第3位は感染症の10.2%で, 高血糖に基づく糖尿病性昏睡は1.7%であった.
2) 死亡時年齢から糖尿病患者の死因をみると, 20歳代以降いつでも頻度が比較的高いのが糖尿病性腎症と感染症で, 脳血管障害は30歳代以降10%前後と一定しているが虚血性心疾患は60歳代から頻度が高くなった. また, 悪性新生物は30歳代からみられ, 男性は40歳から, 女性は50歳以降ほぼ30-40%の頻度を示していた.
3) 死因の地域特異性は, 以下の三群の大別では認められなかった. すなわち, (1) 東北・北海道, (2) 大都市地域 (東京, 名古屋, 大阪, 横浜, 京都, 福岡を中心とした), (3) は (1), (2) 以外の地域.
4) 寿命に及ぼす血糖コントロール状況の影響をみた場合, 悪性新生物と肝硬変を除き, 一般的に血糖コントロール不良群で短命で, その傾向は糖尿病腎症でよく現われていた. 平均死亡時年齢は67.3歳で, 血糖コントロール不良群は良好群に比べて約2.2歳短命だった.
5) 糖尿病罹病期間を加味して血糖コントロール状況の良否と死因を検討すると, 細小血管症である糖尿病性腎症の発症・進展に血糖コントロール状況の良否および糖尿病罹病期間が及ぼす影響は大きいが, 大血管症である虚血性心疾患, 脳血管障害に対してはこれら両因子が直接的に大きく関与している可能性は細小血管症に比べて小さいことが窺われた.
6) 糖尿病の治療内容から死因を検討すると, 食事療法21.1%, 経口血糖降下剤療法25.4%, インスリン療法 (経口血糖降下剤併用療法も含む) 44.6%とインスリン療法が最も多く, かつ血管障害との関連では, インスリン療法は糖尿病性腎症に高頻度で, 腎症の62.8%を占めた.
7) 糖尿病患者の平均死亡時年齢は, 男性66.5歳, 女性68.4歳で同時代の日本人一般の平均寿命に比べて, 各々9.4歳, 13.5歳短命であった.前回の調査 (1971-1980年) の成績に比べて, 10年間で男性は3.4歳, 女性が3.5歳の延命が認められたが日本人一般でも同時に男性2.5歳, 女性3.1歳の延命が観察されていることから, 糖尿病の管理・治療の進歩とは断定できなかった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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