糖尿病
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糖尿病性眼合併症による視力障害
その原因, 危険因子, 背景と生命予後
紀田 康雄柏木 厚典居出 理恵川端 徹阪本 勝彦吉川 隆一
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キーワード: 失明, 視力障害, 網膜症, 糖尿病
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1996 年 39 巻 9 号 p. 687-692

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抄録

糖尿病網膜症は, 中途失明原因の第1位である.そこで615例のインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者の失明頻度, 原因, 臨床的特徴と予後を調べた.失明は4%(24例), 高度視力障害は8%(51例) に認めた.視力良好群と比べ視力障害群では有意に糖尿病歴が長く, 発症年齢が若くインスリン治療者が多かったが, 失明群では最もその傾向が強く, HDL-Cは最も低かった.24例の失明患者中14例 (58%) は腎不全のため透析を受けていた.失明の主たる原因は, 硝子体出血, 網膜剥離黄斑症, 血管新生緑内障や白内障であった.多変量解析では加齢, 増殖糖尿病網膜症, 白内障, 腎症, インスリン治療, 糖尿病歴が独立した視力障害の危険因子であった.断面調査のため血糖と失明の相関は得られなかったが, 経過から失明群の過去の血糖コントロールは明らかに不良であった.失明群は, 観察期間中の死亡率が高く (245例/1000人・年), 生命予後が非常に悪い事が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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