1997 年 40 巻 11 号 p. 711-718
糖尿病患者を対象にNeurometer® を用いて電流知覚閾値 (current perception threshold: CPT) を測定し臨床的有用性を検討した. 健常者47例 (C群) と糖尿病患者73例 (DM群) を対象に右拇趾のCPTを測定し, 従来の神経機能検査との関係を検討した. DM群を神経障害の重症度別に軽症からD, DN, DF群の3群に分け, CPTとCPT等級値 (Katimsら, 1989) の比較を行った. CPTは空腹時血糖, HbA1cとは相関を認めず, 神経機能検査とは知覚神経伝導速度を除き良好な相関を示した (p<0.01). CPTはDF群で他の3群に比し有意に高値であり (p<0.01), CPT等級値はDM3群間全てに有意差がみられた (p<0.05). 異常CPTの出現頻度はD群で知覚過敏が40%, DF群では知覚鈍麻が76%と最多で, DN群ではその中間的な分布であった. CPTによる評価は糖代謝状態の影響が少なく, 従来法にない知覚過敏の評価が可能で糖尿病性神経障害の質的量的診断に有用と考えられた.