糖尿病
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こむらがえりを契機とし前脛骨区画症候群をおこしたと考えられる糖尿病患者の1例
鈴木 吉彦森永 正二郎渥美 義仁細川 和広島田 朗朝比奈 崇介松岡 健平
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1997 年 40 巻 9 号 p. 607-612

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抄録
症例は53歳, 男性. 48歳時糖尿病発病後放置していた. 過飲酒をし夜間に下肢こむらがえりが持続し, その後下腿前面に腫張と発赤が出現し脛骨神経麻痺を呈した. 入院後GOT, CPKが上昇し, 体温血沈の上昇を認めた. CTでは前脛骨部に低吸収像を, 超音波検査Bモードでは同部の腫張と高いエコーレベルを認めた. ドプラーでは同部位への主還流動脈血流は保たれ, 還流静脈血流低下および側副路血流増加を認めた. 手術では前脛骨筋, 長趾伸筋, 長母指伸筋に変色を, 病理所見にて同筋の虚血性壊死像を認めた. こむらがえりが発症した背景には, 過飲酒, 高血糖, 肝障害, 神経障害など多数の誘因があり, 異常な筋収縮が持続した結果, 筋肉内圧上昇から筋虚血, 筋腫張をきたし前脛骨区画症候群を起こしたと考えた. こむらがえりを原因とし前脛骨区画症候群を示した糖尿病例は報告がなく貴重な症例である. また画像所見は本症の診断と病態解明にとり重要な示唆を与える.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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