糖尿病
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糖尿病性ケトアシドーシスに成人呼吸窮迫症候群 (ARDS) および脳梗塞を合併したIDDMの1例
西山 裕之梅野 美一富桝 りか小柳 孝太郎吉田 昌人藤田 尚宏太田 善郎
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1997 年 40 巻 9 号 p. 631-638

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抄録

症例は57歳, 女性. 1993年, 糖尿病と診断され, 食事療法と経口血糖降下薬にて治療を受けていた. しかしながら, 1995年10月より治療を中断1996年11月4日より感冒様症状を自覚するも放置同年11月8日, 長女の出産に立ち会い, 帰宅後に飲酒. その後, 悪心, 嘔吐, 頭痛を自覚するため近医を受診しかしながら, 自覚症状の改善が得られず, 意識混濁も出現したため当院に転院となった. 血糖567mg/dl, 動脈血ガス分析では, pH 6.750, HCO3-1.9mmol/lと代謝性アシドーシスを呈し, 尿中, 血中にケトン体の増加が認められたことから糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) と診断した. 治療開始後, 呼吸困難感が増強. 治療開始6時間後の胸部X線写真では肺水腫様の所見が認められ, 低酸素血症が急速に進行したため, 呼吸管理を行った. また, 経過中, CPK2, 668IU/l, 血清ミオグロビン3, 200ng/ml, 血清アルドラーゼ23.8IU/lと高値を示し, rhabdomyolysisを合併していると考えられた. さらに, DIC, 脳梗塞も併発したが, 補液, インスリン持続注入, ステロイドパルス療法, 蛋白分解酵素阻害薬, ヘパリン, 抗生物質等の投与により改善した. DKAにARDSが合併することは稀であるが, その死亡率は高く, 早期診断と適切な治療が必要であると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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