1998 年 41 巻 1 号 p. 23-27
糖尿病性神経障害の評価方法の一つとして以前より, 電気生理学的検査が用いられている. この方法で測定されるパラメーターの中で神経伝導速度は重要な指標として評価されているが, 同時に測定される振幅測定の臨床的意義については十分評価されているとは言いがたい. 今回我々は尿病性神経障害を有するインスリン非依存型糖尿病患者40名の下肢の後脛骨神経と腓腹神経の伝導速度および振幅を測定した. その結果後脛骨神経では伝導速度と振幅に有意な相関が得られたが, 腓腹神経では得られなかった. またそれぞれの異常率でみると後脛骨神経では伝導速度が, 腓腹神経では振幅で有意に異常を認める頻度が高かった. 以上より糖尿病患者の末梢神経障害を電気生理学的に評価する際には, 後脛骨神経では通常の伝導速度, 腓腹神経の場合は伝導速度よりむしろ振幅を評価することがより重要であると考えられた.