糖尿病
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インスリン非依存型糖尿病患者における123I-metaiodobenzylguanidine心筋スキャンの集積欠損の程度と各種臨床検査所見との比較検討
伊藤 利之東 滋久田 欣一
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1998 年 41 巻 12 号 p. 1063-1071

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抄録

糖尿病患者において, 123I-metaiodobenzylguanidine (123I-MIBG) 心筋スキャンで集積低下を認めることが報告され, 心臓の交感神経障害の可能性が示唆されている.そこで当病院に入院した糖尿病患者43名 (平均年齢58.9±16歳) に123I-MIBG心筋スキャンを施行し, その集積欠損の程度を3グループに分け, それぞれの群での糖尿病の臨床像, 合併症特に神経障害, 心臓合併症とを比較検討した.心筋スキャンは, 123I-MIBG集積異常のない正常群 (n=18) と, 遅延像で下壁欠損を生ずるMIBG異常I群 (異I, n=15), 早期より明らかな下壁欠損を認める異常II群 (異II, n=10) に分類した.MIBG欠損が著明な症例ほど糖尿病歴が長く, 正常群4.6年に対し異I群10.4年, 異II群15.0年と有意の差を認めた. HbA1cも正常群6.5%に対し, 異I群7.5%, 異II群7.6%と高値傾向であった.糖尿病合併症は異II群で著しく高頻度にみられ, 網膜症は異II群にのみ10人中6人に, 腎症は異II群に10人中7人に, 自律神経症状は異II群にのみ10人中3人に認められた.神経伝導速度は異II群で有意の低下を認め (正52.6m/秒vs.異II41.5m/秒), 心拍変動係数も異II群で有意に減少していた (正3.18%vs. 異II 1.71%).高血圧・心肥大は, いずれの群も20~30%と同程度に合併しており, 血圧, 心胸廓比は3群間で有意差を認めなかった.ホルター心電図上, 異II群において心房細動が2例認められたが, 心室性期外収縮はどの群でも数例にLown分類でI-II度程度を認めただけであった.MIBG洗い出し率 (WR) は異II群で有意の著しい亢進をみた (正10.4%vs. 異II 24.9%).以上, 今回の検討では123I-MIBG欠損が著しいほど合併症の進行している症例が多くみられ, 正常群・異1群に比し異II群で著しく高頻度であった. また異常群においても心肥大, 高血圧が有意に多いことはなく, 致死的な不整脈やQTc延長も認められず, 心合併症との関連は明らかではなかった.予後の判定に関してはさらなる検討を要する

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