1998 年 41 巻 12 号 p. 1073-1081
随時尿のアルブミンクレアチニン比 (A/C) を指標とし, 9年間 (1986~1995) 継続測定したNIDDMの107例を対象として, A/Cの可逆性の時期を推測し, また腎症の進展に高血糖および高血圧は経年的にどのように関与したかを検討した.初年時のA/C (mg/g.crea.) をA (<30), B (31~100), C (101~300) およびD (>301) の4群に分け9年後の推移をみた.A/Cの不変は60.0%でA, B群のみであった.B-Aへの改善は29.2%, C, D群からの改善はなかった.Dへ進行したのはA, B群から27.1%, C群からは92.9%であつた.血管合併症による死亡はDへ進行してからであった.終年時のA/Cから改善, 不変群と悪化群に分け血圧および血糖コントロールを経年的に比較した.悪化群において収縮期血圧は9年を通じ, 拡張期血圧は4年目から, 血清クレアチニンは7年目から, 高血圧の有症率は9年を通じ有意に高かった.空腹時および食後2時間血糖の平均値, 高血糖の有症率は悪化群において前半の4年間において有意に高かった.しかし後半の5年間は不変群と悪化群の間に有意差を認めず高血糖の有症率も差がなかった.腎症における可逆性の時点はA/Cが100mg/g.crea.であった.高血圧は9年間を通じて腎症の進展に, また高血糖は前半の4年間において, それぞれ関与が明らかであった.