糖尿病
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Cogan症候群を伴ったインスリン依存型糖尿病の1剖検例
著しい全身性アテローム性動脈硬化症
鴨井 久司薄田 浩幸金子 博池沢 嘉弘高木 正人佐々木 英夫
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1998 年 41 巻 12 号 p. 1103-1109

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抄録

既報のCogan症候群にインスリン依存型糖尿病 (IDDM) を合併した症例の剖検成績を報告する. 症例は42歳の男性.27歳でIDDMを発症し, インスリン治療中の34歳時にCogan症候群が発見された.副腎皮質ホルモン投与にもかかわらず聴力と視力は完全に喪失した. 35歳時微量アルブミン尿が出現し, 40歳時に血中クレアチニンが上昇して, 41歳時ネフローゼ症候群を呈した. この間, インスリン治療と降圧剤の服用は断続的であり, 常に高血糖状態 (HbA1c: 8-10%) と高血圧, 高脂血症が持続した. 剖検では膵臓ラ島のβ細胞が減少していたが, 硝子化や炎症を認めなかった. 腎には高度の糖尿病性腎症と左腎の乳頭壊死を認めた. 全身動脈および大動脈には著しいアテローム性動脈硬化症を認め, 明らかな臓器特異性は認められなかった. 心臓には左室肥大と線維素性心膜炎が認められた. 免疫学的機序により発症する全身性血管炎であるCogan症候群を伴ったIDDMの病理所見の特徴が高度の全身性アテローム性動脈硬化症であったことは, 動脈硬化症の発症・進展にCogan症候群病態の関与ないしその基礎的免疫学機序が関与していることが示唆され, 興味深い.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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